警備員として働こうと考えているときに「前職調査」という言葉を聞いて不安になってしまうことがあるかもしれません。警備業界は、前職調査を行う会社が多い業界です。ここでは、前職調査とはどのようなものなのか、そしてなぜ実施されるのかなどを解説します。
前職調査とは、警備員として採用する際に企業が行う調査です。主に、履歴書に書かれた経歴や面接時に話した内容に詐称がないかを調査しています。2005年に個人情報保護法が施行されてからは、前職調査には本人の同意が必要となっていますが、以前は同意を得る必要がなく、当たり前のように行われていました。
警備員は、警備業法によって警備員になれない人が定められています。採用したい人が警備員になれない人に該当しないかどうかを確認するために前職調査を行う会社は少なくありません。
前職調査が実施される場合は、同意書への記入が求められます。逆に言えば、同意書への記入を求められない場合は前職調査が行われません。
前職調査は、嘘をつかなければ問題ないものですが、問題が生じるのは働きながら転職活動をしているケースです。前職調査をされると今の職場に転職活動がばれてしまうというトラブルが発生していましたが、同意書への記入が必須になったためこうしたトラブルは減っています。
前職調査と似たものにリファレンスチェックがあります。欧米で一般的に実施されている調査です。選考中に企業が応募者の前の職場に問い合わせることは前職調査と同じですが、調査される内容が異なります。経歴に偽りがないか、法に触れることをしていないかを調査する前職調査に対し、リファレンスチェックは勤務態度や人となりの調査です。リファレンスチェックも本人の同意なしに行われることはありません。働きながら転職活動をする場合は、調査してほしくない旨を正直に伝えましょう。
前職調査が行われているのは、主に警備業と金融業です。どちらもその職業に就くことができない「欠格事由」がある職業です。お金に関わるトラブルを起こしたことがある人を金融業で雇えないことはイメージしやすいのではないでしょうか。警備業でも、警備員になれない「欠格事由」が法律で定められています。
警備業の欠格事由は、18歳未満、破産している、法を犯し刑罰の執行が終わって5年経過していない、常習的に法を犯す恐れがある、暴力団の関係者、アルコールや違法薬物の中毒者、警備員として正常に勤務できる精神状態ではない、などです。人々の命を守る仕事のため、こうした欠格事由に該当しないかを調査する必要があります。
しかし、厳しい基準があるわけではありません。普通に生活している18歳以上の方であれば、前職調査は問題なくクリアできます。
企業が直接調査するだけではなく、調査を専門に請け負っている調査会社を利用するケースもあります。直接調査する際は、ネットで検索されたり、直接前職へ電話で確認をとったりするのが一般的です。調査会社を利用した場合は、勤怠まで確認されることも少なくありません。
調査されたからといって必ず前職の内容が確認できるとは限りません。問い合わせを受けても答えない会社もあります。個人情報の取り扱いが厳重になっていますので、前職調査だと分かっていても情報を開示しない会社が増えています。
調査されるというのは誰しもいい気持ちがするものではありません。しかし、メリットもあります。また、調査を行う企業側にとってもメリットとデメリットがあることを知っておくと、嫌な気持ちも和らぐのではないでしょうか。ここでは、前職調査のメリット・デメリットを企業側・応募者側から紹介します。
前職調査を行う企業側のメリットは、応募者に嘘がないかを確認できることです。履歴書は自己申告の書類であるため、それが本当の経歴であるかどうかは面接での対話によって判断するしかありません。履歴書や面接での話に嘘がないことが確認できれば、採用後のリスクを減らすことができます。
デメリットはコストがかかることです。企業が調査する場合は時間と人手がかかり、調査会社に依頼するとコストがかかります。また、最も大きなデメリットは、応募者に不快感を与えてしまうことです。本人に嘘がないほど、信頼されていないことに対する不信感が大きくなり、入社に後ろ向きになったり、入社後の意欲が低下したりといった弊害につながりかねません。
応募者のメリットは、自分の経歴の裏付けができることです。履歴書や面接で話した内容を信じてもらうためには、自分で「信じてください」と訴えるよりも、第三者が証明してくれた方が早いのは言うまでもありません。
しかし、転職をするときは必ずしも前向きな理由ではなく、「仕事が合わなかった」「人間関係が上手くいかなかった」「給与に納得できなかった」など、面接では言えない理由を秘めていることがほとんどではないでしょうか。あまり知られたくないことが知られる可能性があるというのが応募者側のデメリットです。
警備員の採用時は、前職調査が行われることがあります。警備員には欠格事由が定められているため、該当しないことを確認するのが主な目的です。前職調査では、在籍確認とあわせて法に触れる行為がないことを確認されます。場合によっては、勤怠や退職理由などが確認されるかもしれません。前職調査によるトラブルを防ぐためには、履歴書に虚偽を記載しないことはもちろん、面接でも正直な回答を心掛けるといいでしょう。